福田公認会計士事務所 > 記事コンテンツ > 会社設立時の役員報酬はいつ決めないといけない?決め方のポイントについても紹介
会社設立の検討にあたって考慮しないといけない事柄はたくさんあります。役員報酬の設定もそのうちの1つで、たとえば株式会社であれば取締役が最低でも1人は必要であるためこの検討は避けて通れません。
そして設定額によって法人税だけでなく個人の税金や社会保険料も変わってくるため、最適化しようと思うと広範な知識を要します。また、考え過ぎて設定期限を逃すのも良くありませんし、役員報酬に係るルールやその後の影響についてここでチェックしていただければと思います。
会社設立日を事業年度開始日とし、そこから3ヶ月以内に株主総会で役員報酬の金額を決議する必要があります。期限を過ぎると、その年度分の報酬が法人税の損金算入対象外となり、税務上のリスクが高まってしまいます。
例)4月1日設立→6月30日まで。9月3日設立→12月2日まで。
支給開始は原則として決議月の翌月からですが、資金繰りに応じて初月から支給することも可能です。ただし、一度決めた支給開始月は、その事業年度中は変更できません。4月設立の会社が「とりあえず7月から支給開始」と設定した場合、業績が好調でも4月に遡って支給することはできないのです。
一度決定した金額は、その事業年度終了まで基本的に変更できません。
ただし、次のような事由があれば変更することも可能です。
なお、「思ったより売上が伸びなかったから」「新規事業が軌道に乗らないから」といった理由での減額は、税務署から否認される可能性が高いため注意が必要です。要件を満たすかどうかは慎重に判断しましょう。
役員報酬は固定費としての負担が大きいため、よくシミュレーションを行い、その他さまざまな要素とのバランス調整が大切です。特に創業期は売上予測が難しいため、相場を超える高額な役員報酬額の設定はあまり推奨されません。
売上予測から、変動費・固定費(家賃、人件費、設備費等)を差し引いて、会社に残る利益を予測しましょう。そこから役員報酬の支払いに対する余力をチェックします。
シミュレーションが不十分で、自社の資力に見合わない高額設定をしてしまうと資金ショートのリスクが高まります。
特に創業期は売上が安定しないケースも多いため、初年度は最低限の報酬に抑え、業績を見ながら翌年以降に増額を検討するという戦略も有効です。
役員報酬を増やせば法人税負担は軽くなりますが、その分役員個人の負担が増えてきます。節税効果を高めたいのであれば、この構造を理解の上、最適化を目指す必要があります。
着目しておきたいポイントはこちらです。
法人の視点 | ・役員報酬が大きくなると、損金算入により法人税を削減できるが、一方で資金ショートのリスクは上がる ・役員報酬が小さいと税負担は増すが、利益は大きくなり対外的な信用力は得やすくなる |
|---|---|
役員個人の視点 | ・報酬増加で、所得税や住民税が累進課税により負担割合が増してしまう。社会保険料も上昇 ・報酬が少ないほど負担割合も小さくなり役員個人の支出は減らせる |
法人税は基本的に一定の税率が適用されますが、所得税については累進課税が採用されており、個人の所得の大きさに応じて負担の割合も増してしまいます。この点を考慮して、シミュレーションを行いましょう。
節税対策にばかり目がいってしまい、役員の仕事内容や会社の経済状況と見比べたとき、あまりに不自然な金額になってしまわないよう注意してください。
過大な報酬と判断されると損金算入を否認される危険性があります。
そこで、同業他社や従業員給与との比較も行い、業界水準に照らして妥当な範囲内で設定することが推奨されます。判断に悩むときは税理士も利用し、適正な金額を設定していきましょう。