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事業承継でリスタートするときに利用できる補助金制度とその活用方法

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事業承継は、経営者を交代させるだけではなく、事業をリスタート(再構築・改革)する好機でもあります。経営の刷新や新規事業展開に活用できる補助金制度もあるため、用意された仕組みを有効活用することも考えてみましょう。

 

リスタートでの資金調達の必要性

経営者の交代は、企業にとって大きな転機となるでしょう。

親族や従業員、あるいはM&Aによる第三者への事業の引き継ぎは大きな不安も伴うものですが、場合によっては事業内容の見直しや新規事業への転換を図る良い機会となります。

ただ、ここで問題になるのが刷新や新規事業展開にかかる資金です。設備投資やデジタル化対応、新商品の開発、人材育成など、リスタートに向けた取り組みには多くの費用がかかるものです。

融資も一つの手ですが、返済不要の補助金を活用することも視野に入れると良いでしょう。

 

事業承継時に利用できる補助金制度

事業承継時のリスタートを支援する補助金制度に「事業承継・M&A補助金」があります。
※旧「事業承継・引継ぎ補助金」から更新された補助金制度。
https://shoukei-mahojokin.go.jp/r6h/

補助金ですので原則返済不要で、事業計画が採択されれば交付を受けられます。

なお、利用枠組みには4種あり、それぞれ対象者や補助上限額、補助対象経費などが異なります。以下では2025年11月時点での情報に基づいて各枠組みの概要をご紹介しますが、補助金や助成金の仕組みは頻繁に更新されていますので実際に手続きを行う際は最新情報を必ず確認するようにしてください。

 

事業承継・M&A補助金の4つの枠と特徴

「事業承継促進枠」では、5年以内に親族や従業員への承継を計画している事業者が対象です。
事業承継計画書を作成し、一定期間内に承継を完了させることが条件となります。設備投資、デジタル化、店舗改修など、会社の競争力を高めるための投資が対象で、補助上限額は800万円。一定の賃上げを実施すれば1,000万円に引き上げられます。

「専門家活用枠」は、M&Aを通じて他企業から経営資源を譲り受ける(買い手)、または譲り渡す(売り手)事業者向けの枠です。
FA(フィナンシャル・アドバイザー)やM&A仲介会社の成功報酬が補助対象で、補助上限額は600万円。デューデリジェンス(DD)費用については追加で最大200万円が補助されます。

「PMI推進枠」は、M&A後の経営統合を支援する枠です。
統合支援専門家の費用や設備更新、販売体制の整備といった経営統合に必要な取り組みに対し、最大800~1,000万円の補助が受けられます。

「廃業・再チャレンジ枠」は、事業承継やM&Aを機に採算の取れない既存事業を廃業し、新たな事業にチャレンジする事業者向けです。
廃業手続き費用、原状回復費用、在庫廃棄費などが対象で、補助上限額は150万円(補助率は2/3以内)。特に親族承継で事業の一部廃業を検討している場合に有効利用できるでしょう。

 

申請前に知っておきたい補助金活用のポイント

補助金は、最低条件を満たして手続きをするだけで必ずもらえるものではありません。

成功させるには事前準備に力を入れて、提出書類を整備しましょう。事業計画書や経営状況説明書、直近数期分の財務諸表、見積書など多くの資料を用意し、各資料の質は高くあることが望ましいです。
「なぜこの事業を行うのか」「数値目標とその根拠は何か」など、事業計画書等で具体的かつ説得力をもって説明できるよう目指しましょう。

また、「電子申請」が必須とされていることもあります。
その場合、GビズIDプライムアカウントが必要です。アカウント取得に数週間かかることもありますので、その他の準備と同時進行で、早めに進めておくことが推奨されます。

 

補助金以外にも視野を広げよう

補助金以外にも事業承継のリスタートを支援する仕組みはあります。補助金同様に返済が不要な助成金、返済が必要であるものの一般的な融資より条件が緩和されている事業承継向け融資制度も利用を検討すると良いです。

  • 起業支援金・・・起業者や、事業承継や第二創業に取り組む事業者向けの制度で、都道府県や市町村が選定した団体が伴走支援を行いながら、事業費を助成する。
  • 日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金・・・事業承継に必要な資金を融資する制度で、補助金よりも迅速に資金調達ができるメリットがある。返済は必要だが、経営の安定期に返すことができるため、タイムリーな資金需要に対応しやすい。
  • 地方自治体の融資制度・・・利息その他の条件で事業者の負担を軽減する仕組みが設けられていることもあるため、活動拠点の自治体にて要チェック。

補助金には返済不要というメリットがある一方、交付まで数ヶ月間を要し、事業完了後の報告義務などの負担も生じます。
これに対し融資は返済が必要ですが、資金調達が比較的迅速です。事業承継のタイミングや資金需要の時期を考慮し、補助金と融資を適切に組み合わせることが、安定した事業運営につながるでしょう。