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創業融資の種類~会社設立後の資金調達で日本政策金融公庫を利用する場合~

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設立から間もない会社によくある課題が「資金不足」です。資金調達をするにも実績が不十分であるためなかなか審査に通らず苦労することもあるかと思います。そのような場合には、創業融資の活用を検討しましょう。事業を始めて間もない事業者を対象とした制度であれば一般的な融資よりも成功確率を上げる、あるいは不利な条件での融資を避けることができるかもしれません。

ここでは特に日本政策金融公庫が運営している各種創業融資について紹介していきます。

 

新規開業・スタートアップ支援資金

創業期の融資として代表的なものが日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。

対象者は、これから事業を始める方または事業を始めてからおおむね7年以内の方で、新事業のための設備資金や運転資金を上限7,200万円借り入れることができます(運転資金はそのうち4,800万円)。

設備資金は20年以内の返済期間(据置期間は5年以内)、運転資金に関しては10年以内の返済期間(据置期間は5年以内)と定められています。

以上が基本的な特徴ですが、①女性・若者・シニアによる創業、②廃業歴のある方による創業、③中小会計の適用を受けての創業、の場合には融資条件が緩和されます。

 

女性・若者・シニアによる創業の場合

女性が創業をする、35歳未満が創業をする、55歳以上が創業をするケースでは、特別利率で新規開業・スタートアップ支援資金を利用することができます。

通常は「基準利率」の適用を受けるところ、これらの方が申し込むときは「特別利率A」の適用を受けることができますので、2025年4月時点の年利(%)でいえば0.4%の引き下げが可能となります。
※利率の参照URL(https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html

 

廃業歴のある方による創業の場合

廃業歴があり、廃業時の負債が新事業に支障をきたさないこと、廃業の理由がやむをえないものであること、などの条件を満たせば資金使途や返済期間の面で優遇を受けられます。

資金使途に関しては本来、立ち上げる事業そのものに使うことが想定されていますが、創業への再チャレンジ枠においては「前の事業に関する債務を返済するために使う」ことも認められます。

そして運転資金の返済期間も10年以内が基本ですが、この場合には「15年以内」と定められています。

 

中小会計の適用を受けての創業の場合

「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用(または適用予定)があり、事業計画書の策定を行うとともに認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けている方を対象とする枠組みも用意されています。

前者は、一定の適切な方法で会計処理を行っており経営の透明性が確保されているということ、後者は税理士等の専門家からのアドバイス受けているということを意味します。

そしてその要件を満たすときは基準利率ではなく特別利率を適用し、融資を受ける事業者の負担を少し軽減できるようになっています。

 

資本性ローン

スタートアップや新事業の展開に取り組む方であって、財務体質の強化を狙いたいときは、「資本性ローン(挑戦支援資本強化特別貸付)」の利用も検討すると良いでしょう。

上記の新規開業・スタートアップ支援資金やその他の融資制度の対象となる方であって、さらに①地域経済活性化に関わる事業を行う、②税務申告を1期以上行っている場合は所得税等を完納していること、を満たすことで利用可能となります。

融資限度額は「7,200万円」、返済期間は「5年1ヶ月~20年」です。

一番の特徴は、融資後1年おきに業績に応じた利率が適用される点にあります。そして返済は期限後一括で行い、その間毎月の支払いは利息のみです。資本性ローンによる融資であれば自己資本と評価することができ、財務体質の悪化を防ぐこともできます。

 

併用可能な制度もある

ここで紹介した創業融資、そのほかにもさまざまな制度が用意されています。それらと併せて利用できる特例制度の1つに「創業支援貸付利率特例制度」というものもあります。

これは新たに事業を始める場合または開始から2期を終えていない場合に利用可能で、併用する各種融資制度の利率から0.65%を差し引くことを認める内容になっています。

創業を予定している段階にあり、日本政策金融公庫の融資制度で資金調達を考えているのであれば、創業支援貸付利率特例制度により少し負担を軽減することができるでしょう。

 

融資規模の大きな「中小企業事業」もある

上記の各種制度は「国民生活事業」という枠組みに入るもので、主な対象者を小規模事業者や個人事業主と想定しています。融資残高の平均は1,000万円未満で、短期の運転資金についても取り扱いがあります。

一方、もう少し規模の大きな中小企業や革新的なビジネスモデルで発展を目指す起業などは「中小企業事業」に該当する創業融資も検討すると良いです。融資残高の平均は1億円を超え、短期の運転資金については取り扱いがないものの、より本格的な事業展開を目指す事業者には利用が適しています。

創業期向けのものとしては、次のような制度が用意されています。

 

中小企業事業の創業融資の例

新事業育成資金

・高い成長性が見込まれる新事業を始める方が対象。
・他社で利用されていない技術を利用して行う事業、特定の補助金を受けて開発した技術を利用して行う事業など、一定の事業が対象。
・融資限度額は7億2,000万円(直接貸付)

女性、若者/シニア起業家支援資金

・35歳未満、55歳以上、または女性が新事業を始める場合に利用可能。
・他社で利用されていない技術を利用して行う事業、特定の補助金を受けて開発した技術を利用して行う事業など、一定の事業が対象。
・融資限度額は7億2,000万円(直接貸付)、1億2,000万円(間接貸付)

再挑戦支援資金
(再チャレンジ支援融資)

・事業に失敗した経営者が新たに事業を始める場合に利用できる。
・他社で利用されていない技術を利用して行う事業、特定の補助金を受けて開発した技術を利用して行う事業など、一定の事業が対象。
・融資限度額は7億2,000万円(直接貸付)

スタートアップ支援資金

・日本経済の成長、社会課題の解決に寄与する見込みがあるスタートアップ企業が対象。
・VC(ベンチャーキャピタル)等からの出資を受けているなど一定の評価を受けていることが必要。
・融資限度額は20億円(直接貸付)

 

国民生活事業でも同様の趣旨の制度が用意されていますが、条件の詳細は異なります。いずれも国民生活事業の融資制度より条件のハードルが高く、その反面、融資限度額は大幅に高く設定されているのが特徴といえるでしょう。