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補助金と助成金は何が違う?それぞれの傾向をわかりやすく解説

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補助金と助成金はどちらも返済不要の資金として多くの事業者が活用しています。資金調達の手法として補助金と助成金はまとめて紹介されることが多く、実際共通点も多いです。しかしその制度の運用目的や管轄、窓口、申請条件、給付額、予算運用などには異なる傾向があります。この違いについてわかりやすくまとめました。

 

補助金の特徴

補助金は、「国や自治体が、ある特定の政策目標を達成するために、事業者のする一定の事業に対して経費の一部を補助する制度」と説明することができます。

補助金にもいろいろありますので、特徴も一概にはいえません。しかし傾向としては、事業の拡大や研究開発、設備投資、新規市場開拓など、「地域振興や産業活性化といった社会的な成果」を重視しているといえるでしょう。

大きな取り組みに対して補助がなされることが多いため、支給額も数百万円~数億円と高額であるケースが多いです。そのため補助金が受けられると事業者は大きな推進力を得ることができますが、公募期間や予算枠に対する制約もあり、一定の審査を通過した提案のみが支給対象となります。

応募条件を満たしていても採択されるとは限らず、提出書類の充実度や事業計画の高い説得力が合否を左右することになります。

 

《 補助金の代表例 》

  • ものづくり補助金
    ・・・中小企業等の革新的な設備投資やサービス開発を支援し、生産性向上を図る補助金
  • IT導入補助金
    ・・・中小企業・小規模事業者のITツール導入による業務効率化・生産性向上を支援する補助金
  • 中小企業新事業進出促進補助金
    ・・・新市場や高付加価値事業の進出に必要な設備投資を支援するための補助金
    ※2025年に新設された制度
  • 中小企業省力化投資補助金
    ・・・人手不足を目指す省力化製品の導入を支援するための補助金
    ※以前からある、カタログから製品を選ぶ比較的簡易な「カタログ型」に加え、多様な製品に対応した「一般型」が2025年に新設された

 

助成金の特徴

助成金は、「従業員の雇用維持・創出や労働環境改善、人材育成など、“ヒト”に関わる事業者の取り組みを対象に支援する制度」と説明することができます。

雇用保険料を財源とし、雇用関連で利用できるものが多い傾向にあります。雇用の安定や働きやすい環境づくりを促進することが狙いとされ、条件を満たすなら基本的には給付を受けられます。

コンペ方式で採択をしてもらう、といったタイプではありません。初回申請後は要件達成を報告するだけで継続的に受給可能なケースも多いですが、給付額は数十万円~100万円程度と比較的小規模です。

 

《 助成金の代表例 》

  • キャリアアップ助成金
    ・・・非正規労働者の正社員化や処遇改善など企業内キャリアアップ施策の実施を助成する
  • 人材開発支援助成金
    ・・・事業主が職業訓練(OFF-JT/OJT等)を計画的に実施した場合の訓練経費・賃金一部を助成する
  • 雇用調整助成金
    ・・・休業・教育訓練・出向による雇用維持を図る事業主に対し、休業手当などの一部を助成する

 

補助金と助成金の比較表

それぞれの一般的な傾向の違いを整理しました。下表を参考にどう違うのかをイメージしていただければと思います。ただし、実際に申請するときは概要を掴むことより個々の制度についての理解を深めることが重要です。

 

比較項目

補助金

助成金

目的

新技術開発・設備投資・地域活性化など、政策目標の達成(例:ものづくり補助金)

雇用の維持・創出、労働環境改善、人材育成など、雇用・労務の安定化(例:キャリアアップ助成金)

管轄

経済産業省・中小企業庁、都道府県・市区町村など

厚生労働省(都道府県労働局)

財源

国・地方自治体の税金

雇用保険料(一部税金)

支給額

数百万円~数億円

数十万円~100万円程度

審査方式

提案の優劣で採択を行うコンペ方式。採択率は各制度により異なるが、50%を切ることもある

受給条件を満たせば原則として給付される。ただし申請可能期間には注意が必要

申請期間

毎年数週間~数ヶ月程度。年度予算枠で公募を実施

通年で申請できることも多い。ただし予算上限に達し次第締め切りとなる場合もある

申請要件

事業計画書提出、実績・見込み、地域性や業種制限など審査基準が厳格

雇用保険適用事業主、就業規則整備、賃金規程等のクリア

 

どちらか1つに絞る必要はない

大規模な設備投資や新事業を推進したいのであれば補助金の活用、雇用の安定や人材育成を図りたいのであれば助成金の活用が適しています。

ただし、「補助金にするか、助成金にするか」など1つに選択肢を絞る必要はありません。利用できるなら複数の制度を活用すると良いでしょう。一定の取り組みに対する金銭的負担を軽減するとともに、事業者としての実績(「○○で採択された」など。)を作ることもできます。

また、申請過程に共通点もありますので、可能なら同じ制度を複数回利用するのが効率的です。申請時に事業計画書を作成することもあり、仮に申請が通らなかったとしても自社の状況を見直す良いきっかけにもなるでしょう。