福田公認会計士事務所 > 記事コンテンツ > 複数事業を営む経営者が税理士を変更するときの注意点
事業や会社を複数抱えていると、税理士の変更は一社だけを切り替えるのとは勝手が異なります。契約の範囲が事業ごとに分かれていたり、決算期がそろっていなかったりするためです。
引き継ぎでつまずきやすい部分と、事前に確かめておきたい点を取り上げましたので、それぞれ見ていきましょう。
複数の事業や法人を運営している場合、税理士への依頼内容が事業ごと・法人ごとに異なることがあります。たとえば、A社は記帳から決算までを依頼し、B社は決算申告のみを依頼している、あるいは個人の確定申告は別の税理士に依頼している、といった具合です。
そこで変更を考える段階で、法人ごとに誰と何の契約を結んでいるかを書き出しておきましょう。あわせて、年末調整・法定調書・償却資産申告・各種の届出といった年に一度しか発生しない業務を誰が担当しているかも確かめておくと、引き継ぎの抜けを防げます。
契約書を交わさずに慣例で頼んでいる業務も整理しておきましょう。
会社が一社であっても、複数の事業を営んでいれば注意すべき点は生じます。会計処理の前提が事業ごとに異なっていることがあり、それが伝わらないまま担当者が変わると、これまでと違う数字が出てくるためです。
事業ごとの採算を見るために部門別の会計を組んでいる場合、家賃や人件費など複数の事業にまたがる経費をどう振り分けるかという基準が必要になります。
家賃を面積で按分しているのか、人件費を従事時間で分けているのかといった取り決めは、書類に残っていないことも少なくありません。
基準が変われば事業ごとの損益も変わり、過去との単純な比較ができなくなります。そこでこれまでの考え方を文書にまとめて渡しておいて、引き継いだ後も同じ基準で評価を続けられるように備えましょう。
会社が複数ある場合、「一度にまとめて移すか、段階的に移すか」の判断が必要です。それぞれ向いている状況が異なります。
進め方 | 向いている状況 |
|---|---|
まとめて切り替える | グループ全体を一体で見てもらいたい、資料の受け渡しを一度で済ませたい |
主要な会社から先に移す | 新しい税理士の対応を確かめてから広げたい |
一部の会社だけ残す | 特定の分野に強い税理士に個別の案件を依頼し続けたい |
段階的に進める場合、移行期間中は複数の税理士が関与することになります。資本関係や取引のある会社を別々の税理士が担当すると、同じ取引について認識が食い違うおそれがあるため、つながりのある会社はまとめて移すほうが無難といえるでしょう。
法人ごとに決算期が違えば、動きやすい時期も会社ごとに変わります。
3月決算と9月決算の会社があるなら、前者は申告を終えた6月以降、後者は12月以降が一つの目安になります。
決算期の途中で移す会社については、新しい税理士が期首からの取引を確認し直す作業が発生し、その分の費用がかかることがあります。見積もりを取る際に、期中からの引き継ぎになる会社があることを伝え、費用に含まれるかを確かめておきましょう。
一社に税務調査が入ると、取引のある関連会社にも確認が及ぶことがあります。調査の連絡を受けている時期や進行中は、これまでの経緯を把握している税理士に対応してもらうほうが話も早く進みます。
切り替えは調査が終わってからにするのが安全です。
求められることが多いのは、直近数期分の決算書と申告書の控え、勘定科目内訳明細書、総勘定元帳、固定資産台帳、会計ソフトのデータ等です。
これらを会社ごとに用意しましょう。
会計ソフトが会社によって異なる場合は、新しい税理士事務所側でそのまま読み込めるかを早めに確認しておきましょう。あわせて、青色申告の承認申請書や消費税に関する届出書など、税務署へ提出済みの書類の控えも会社ごとに整理しておくと、状況を伝えやすくなります。
複数の会社を持つと、会社間の貸付金や賃貸借、役員の兼務、業務の委託といった関係が生まれることもあります。これらは帳簿を見ただけでは伝わらない可能性もあるため、事前の情報共有が大切です。
たとえば、代表者が所有する不動産を会社に賃貸している場合の賃料の設定根拠、会社間の資金移動を貸付として整理した経緯、役員報酬をどの会社からいくら支給するかの考え方などは、口頭のやり取りで済んでいることがあります。
また、株式をすべて保有している会社同士で資産をやり取りしている場合は、税務上の取扱いが通常の取引と異なることがあります。誰がどの会社の株式をどれだけ持っているか、関係性をあらかじめ伝えておくと、税理士変更もスムーズに進みやすくなるでしょう。